WALKMANがあるからiPodがある

2008-09-06 阿蘓 政志

パラダイムシフトその1 ■録音機としての宿命を切り捨てたときに新たな機能が生まれた 僕が小学生だったある日札幌の日産に勤めていた新し物好きの叔父が「Soni Tape」というものを持ってきた。

それは昔のSONYのオープンリール・テープレコーダーだった。紙で出来たテー プを使っていてすぐにテープが切れた。その切れたテープを大和のりで繋げ様 としたが駄目だった。まるで三丁目の夕日みたいな話だが本当のことです。

そのうちカセット・テープレコーダーというものが出来て中学校の英語の先生 がSONYのカセット・テープレコーダーを持ってさっそうと英語の授業をしてい たのが印象的だった。

その頃のテープレコーダーはその名の通りテープでレコーディング(録音)出 来る機械だった。当たり前だが。

僕が高校生になったら日本中オーディオブーム(オーディオも死語ですな)で どこのプリメインアンプ、レコード・プレーヤー(LPレコードをかける機械)、 テープ・レコーダーは高性能で高価格なオープン・リール・デッキかその頃急 激に性能が良くなってきた比較的安価で使いやすいカセット・デッキにするか 迷ったものだ。

そんな性能重視の世の中にある日SONYから再生しかできないコンパクトなカセ ット・テープレコーダーが発売された。これがWALKMANだった。

僕はその頃カセット・デッキで録音したテープは他のカセット・デッキで再生 するだけで音が劣化するといわれていたものが録音もせずに他のカセット・デ ッキで録音したものを聞くという行為自体が理解できなかった。

しかし、これがSONYが行った最大のパラダイムシフトだった。録音機の録音機 能を切り捨ててコンパクトにしてしまう。

そうしたら小さくなってポケットにいれて(その頃はそれほど小さくなくカバ ーケースに腰のベルトを通していた)オープンエアータイプの軽量なヘッドフ ォンを付けて歩きながら聞くというスタイルが出来上がった。

これはあっという間にブームになってWALKMANが手に入らなくなった。

僕も北海道から上京してきて電車で移動するようになりそれがとても格好良く 見えた。

その後はみなさん既にご存知の通りWALKMANはCDになり。いまはMP3対応のメモ リーに録音(というよりMP3にエンコーディングしたものをコピー)して聞く ようになった。

パラダイムシフトその2 ■音質を向上させるのではなく低下させる もうひとつのパラダイムシフトは、実は音質は年々低下しているという事実で す。オーディオブームのころはひたすら音質向上を目指して長圧重大なものを 作っていました。

なぜかPC時代になるとネットから音楽が聴けるというだけで十分で音質にこだ わる人は少なくなりました。というより本当はオーディオ・メーカーが考えて いるほど音質にこだわっているユーザーは少なかったということだと思います。

僕は元々オーディオ・マニアになりたかったので昨今の音質軽視は耐え難いの ですがiPodのポータビリティには負けました。ただしAppleの耐久性の無さに は昔のSONYを彷彿とさせるものがあります。

パラダイムシフトその3 ■圧倒的なマーケティングテクニック 今回SONYがAppleにiPodを先んじられたのはSONYの弱体化だけではなくマーケ ティングテクニックの差が大いにあったと思います。 実はSONY内部ではAppleの何年も前からiPodの様なものを作ろうとするアイデ アがあったということを聞いています。

実はAppleはiPodの製造に必要なコンポーネントは既にあるものを使っていて それを組み合わせているだけです。ポイントは洒落たデザインとそれを使いや すくするユーザーインターフェースアプリケーションです。

それを低価格でスタイリッシュなマーケティングで売るのであっという間に他 を圧倒してしまいました。

現在は技術そのものでは売れずそれをコンポーネントしたスタイリッシュな製 品を圧倒的なマーケティング力と低価格で売ったところが成功しているのです。

でも最初にWALKMANがそれをやったのです。

[お礼]おかげさまで沢山の方に「貯徳問答講」の申し込みをいただきました。 また、第9回貯徳問答講が近くなりましたらご案内させていただきます。本当 にありがとうございました。

 
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